石多 未知行
| クリエイティブディレクター / 空間演出家 / 映像クリエイター 一般財団法人 プロジェクションマッピング協会 代表 カラーズクリエーション株式会社 代表取締役 映像を「光」として捉え、空間をダイナミックに演出するアーティストとして国内外で活動。 2011年にプロジェクションマッピング協会を設立。以来、世界最大級の国際大会の企画演出をはじめ、国家事業での企画制作、海外の国際祭典での講演や審査員などに招聘されるなど、この分野における国際的な第一人者として知られる。 アート視点を持つクリエイティブディレクター·プロデューサーとして、都庁プロジェクションマッピング「TOKYO Night & Light」のコンテンツ企画プロデュースや、大阪·関西万博催事場でのプロジェクションマッピング企画、そして海岸の波を光らせる「NIGHT WAVE」など、唯一無二のプロジェクトを多数手掛けている。 |
石多 未知行
高輪の記憶を巡る『光の記憶航路 – Time Voyage』
「TAKANAWA LIGHT JOURNEY」 のメインコンテンツ『光の記憶航路ーTime Voyage』を石多氏が企画監修しました。 日本で初めて海の上を鉄道が走った約150年前から、現在、そして100年後の未来まで、この地で積み上げられた歴史と記憶を辿る時空の旅。ある日一枚の切符が届き、高輪の歴史とモビリティの進化をめぐる旅が始まります。この旅は、映像が移動する特殊な先進技術を使ったプロジェクションマッピングと、会場の噴⽔を連動させた、⽴体的な空間表現によって演出されます。さまざまな挑戦が繰り広げられた高輪から、新たな体験への旅が始まります。
Q1.今回の高輪ゲートウェイシティという場所で、どのような物語を描こうとされたのでしょうか?
石多 未知行氏(以下、石多): まず、高輪という土地の文脈をリサーチした時、ここは明治初期に「高輪築堤」が築かれ、海の上を日本初の鉄道が走った場所だという事実に惹かれました。当時の人々にとって、海の上を鉄の塊が走るなんて、魔法のようなイノベーションだったはずです。 その「革新の記憶」を、2026年の現代、そして未来へと繋げたいと考えました。
石多: 今回の演出の中では、鉄道だけではなく、あえて「切符」にも着目しました。 切符というのは、単なる乗車券ではなく「移動の自由を手に入れるための鍵」だと考えました。 かつて江戸時代には関所があって自由に行き来できませんでした。それが明治になり、切符を買えば誰でも遠くへ行けるようになった。そして現代ではICカードになり、タッチすればどこへでも移動できる。さらに未来は、顔認証や生体認証などで、もっと自由にどこへでも行けるようになるでしょう。
この進化は、「行き先が決められた移動」から「自由な移動」への解放の歴史でもあります。 今回の作品では、宙に浮いた一枚の切符が、古い硬券からICカード、そして大きな瞳(虹彩認証)へと姿を変えながら、観客を時空の旅へ連れ出すガイド役として演出しました。
Q2.本作では、国内初本格導入となる最新技術が活用されたとお聞きしました。
石多: プロジェクターの出力に可動式のミラーを装着することで映像の投射位置や角度をダイナミックに制御できる先進技術「ムービングミラー」を使用しました。 鏡の角度を高速かつ精密に制御することで、映像を壁面だけでなく、天井、床、そして観客の足元へと、縦横無尽に移動させることができます。 今回は「旅」や「移動」がテーマです。映像そのものが空間を旅するように動くことで、没入感が生まれると考えました。
Q3.技術的なハードルはありましたか?
石多:そうですね。例えば、反射させた映像が遠くに行けば行くほど、映像のサイズは大きくなってしまいますし、歪みも生じます。それを計算しながら、映像を少しずつ縮めたり変形させたりして、違和感なく見せるための制御が必要です。 パナソニックと我々のエンジニアチームと共同で、3Dシミュレーションと現地の調整を重ねました。 これまでは「四角い室内や平滑な建物の外壁に映す」といった事例はありましたが、今回のように屋外の広場で、複雑な建物の形状に合わせて、ムービングミラーを使って広範囲に映像を動かすというのは、世界的にも稀な挑戦だったと思います。
Q4.石多さんが今後挑戦したい演出について教えてください。
石多: 今までは「既存の建物」に映像を当ててきましたが、次は「場所」そのものの設計から関わってみたいですね。
イメージとしては、ラスベガスの「シルク・ド・ソレイユ」のようなものです。彼らは、その演目をやるためだけに設計された専用のシアターを作り、何年も運用をしていますよね。
日本でも、そういった「その作品のためだけに作られた空間」で、映像、照明、レーザー、音響、パフォーマンスが完全に一体化した、没入できるショーを作りたい。 そこでは、他の演目はできないくらい特化した設計にして、その代わり10年、20年とロングランで回していく。 最初の投資や時間はかかりますが、最終的には長く愛される都市のレガシーになります。そういった、空間そのものが一つの作品となるような、新しいエンターテインメントの形を日本で作りたいですね。
拡張するプロジェクションマッピングの領域
二部を通してお届けしたプロジェクションマッピング協会代表理事・石多未知行氏のインタビュー。
前半では、東京都庁の事例を挙げながら、プロジェクションマッピングが単発のイベントから「都市の常設インフラ」へと役割を変えつつある現状が語られました。 後半では、高輪ゲートウェイシティという場所の歴史を表現するクリエイティブな挑戦に加え、将来的には「専用の空間」そのものを設計から手掛けたいという構想も明かされました。
既存の建物に映像を投射するフェーズから、ハード・ソフト・建築を統合した「体験の場」を創出するフェーズへ。石多氏の視点は、プロジェクションマッピングという言葉の定義を拡張し、日本の空間デザインと体験に新たな潮流を生み出そうとしています。


映像や空間演出を手掛けるプロデューサー兼ディレクター。
ProAV Picksでは各種展示会や製品情報のレポートを中心に紹介。