BASSDRUM 清水幹太 氏 インタビュー 第二部:欧州発・空間体験設計のプロ集団「jangled nerves」と日本市場へ

BASSDRUM 清水幹太 氏 インタビュー 第二部:欧州発・空間体験設計のプロ集団「jangled nerves」と日本市場へ

技術者がプロジェクトの最初から関わることでクリエイティブと技術をつなぐ独自の立ち位置を築いてた、BASSDRUM代表・清水幹太氏。本稿では、清水氏が欧州の空間デザイン集団「jangled nerves」の日本代表に就任した背景と、そのデザイン哲学が日本の空間演出にもたらす新たな可能性について伺いました。


第一部では、BASSDRUM代表・清水幹太氏の異色のキャリアを伺いました。BASSDRUMは「テクニカルディレクターを中心とした世界初の組織」として、従来の制作フローの「末端」だった技術者が、プロジェクトの初期段階から参画し、クリエイティブと技術の「媒介者」となることを目指しています。そんなBASSDRUM代表の清水氏が、次なる一手として、欧州のデザイン集団「jangled nerves」の日本法人代表に就任しました。この第二部では、その真意を伺っていきます。

jangled nerves / ジャングルドナーブス

jangled nerves | communication architects | stuttgart & shanghai

https://janglednerves.com/

We create experience design: spatial media experiences and spatial communications for museums, exhibitions, theme rooms, showrooms, visitor centers, trade fairs and events.

建築設計の知見とメディア表現の技術を融合し、空間そのものを体験の舞台として構築するドイツ・シュトゥットガルト発のデザインスタジオ。ブランドショールームや万博パビリオン、展示会、博物館など多様なシーンにおいて、ストーリーテリングを軸に人々の感情に深く訴える没入体験を設計。建築・インスタレーション・映像・インタラクションなどを一体化させた空間演出を得意とし、コンセプト立案からデザイン、プロジェクト管理までを包括的に担う。2025年9月に設立した日本法人において、清水 幹太 氏が代表に就任。



EXPO 2025 大阪・関西万博 ルクセンブルグパビリオン Photo by Wataru Aoyama BASSDRUM

ドイツ・ウンターウフルディンゲン パールバウテン博物館 Adrian Alexander | jangled nerves

Q9. 清水さんが欧州のデザイン集団「jangled nerves」の日本法人代表に就任された経緯を教えてください。

清水幹太さんインタビュー写真

清水幹太氏(以下、清水):

これもまた面白い縁なんですよ。きっかけは、2024年に世界最高峰のデザイン賞であるロンドンの「D&AD」のDigital Design部門の審査員長をやらせていただいたことでした。その時、Spatial Design(空間デザイン)部門の審査員だったのが「jangled nerves」代表のトマスさんだったんです。

実は、彼らが大阪・関西万博のルクセンブルク館を手がけることになったタイミングで、「日本で自分たちのデザイン思想を理解して、一緒に動ける人はいないだろうか」と審査員名簿を見ていたそうなんです。

そして、私のプロフィールを見てピンと来たらしく、彼から連絡をもらったのが最初です。

彼らの拠点はドイツのシュトゥットガルト。メルセデス・ベンツやBOSCHといった企業がひしめく工業都市です。もともと日本でのモビリティ関連のプロジェクトも多かったことから、「一緒にjangled nerves japanをやろうよ」という話になり、今回の体制が実現しました。

Q10. 「jangled nerves」のデザインは、日本の空間デザインとどう違いますか?

清水:正直に言ってしまうと、今の日本の都市の景色を見ていて疑問を感じる部分もあるんです。なんというか「化学調味料」が多すぎるんですよ。「とりあえず大きなLEDを置いて、派手に光らせよう」といった足し算ばかりと言いますか。今の日本はデジタル技術を用いた空間演出をどこでも見ることができますが、それ以外の「モノサシ」が少ない気がしています。

その点、「jangled nerves」は面白いです。彼らはたとえば「バウハウス」の流れを汲むような、ヨーロッパの深いデザインの文脈(コンテクスト)をしっかりと背負っている。そこが決定的に違うんです。

💡[ バウハウス ]

1919年から1933年にドイツで存在した、建築とデザインの教育機関および、そこから生まれた芸術運動。ドイツ語で「建築の家」を意味し、芸術と技術の融合を目指し、装飾を排除した機能的なデザインを追求しました。

例えば、ドイツのエッセンにある旧炭鉱を博物館にしたプロジェクト。彼らはそこにある巨大なタンクや壁面といった「素材そのもの」を活かして、そのまま展示物として再デザインしました

Ruhrmuseum | jangled nerves

https://janglednerves.com/en/experiences/ruhr-museum

See the exhibition concept for the Ruhr Museum here: multimedia storytelling and immersive scenography in the iconic coal washing plant at the Zollverein.

清水幹太さんインタビュー写真

煙突があれば、その中で煙がどう動くかをレーザー光線で芸術的に表現したりするんです。これって、日本でよくある「歴史的な建物に、脈絡のない映像を映すだけのプロジェクションマッピング」とは正反対のアプローチです。

空間が持つ物語や素材を大切にし、「なぜここで、この技術を使う必要があるのか」という必然性を突き詰める。この「別のモノサシ」を日本に持ち込むことに、私は大きな意味を感じています。

Q11. BASSDRUMとjangled nervesが組むことで、今後どんな化学反応を期待されていますか?

清水:BASSDRUMは技術者の集まりですから、日々新しい技術のタネをたくさん作っていて、いい意味で「余計なもの」もたくさん抱えている(笑)。その知見や実験結果を、彼らのグローバルなデザインに提供できるのは強みですね。

逆に私たちとしては、日本の優秀なテクニカルディレクター(TD)たちを、海外のプロジェクトへ「輸出」していく足がかりにしたいと考えています。

そして何より、私が「jangled nerves japan」の代表として動くことで、空間デザインの最初期段階から「技術とデザインの両方の文脈」を持って対話ができる。これこそが、第一部でもお話しした「プロジェクトの最初から入る技術者」としての理想的な形なんです。

欧州のデザイン哲学との融合が拓く空間体験

清水幹太さんインタビュー写真

清水氏がjangled nervesとともに日本に持ち込むのは、ヨーロッパの深いデザイン文脈と、空間の歴史や素材を尊重する「別モノサシ」です。

この「jangled nerves」のデザイン哲学と、BASSDRUMの「しゃべれる技術屋」としての強みが融合することで起こり得る化学反応は、日本の空間体験の進歩を大いに期待させてくれました。

足し算のために技術を使う体験ではなく、「文脈」に根差して技術を使う、必然性のある体験へ。

オフィスや商業施設、ミュージアムといったあらゆる場において、これまでのモノサシとは異なる、より本質的で記憶に深く刻まれる「空間体験」を日本にもたらしてくれるに違いありません。

この記事のWRITER

映像や空間演出を手掛けるプロデューサー兼ディレクター。
ProAV Picksでは各種展示会や製品情報のレポートを中心に紹介。

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