最近、"イマーシブ"って言葉をよく聞くように感じませんか?
「イマーシブ(Immersive)」とは、日本語で「没入感」や「没入型」と訳される言葉です。そして「イマーシブ空間」とは、まるで自分がその世界に入り込んでしまったかのような、究極の没入体験ができる空間のことを指します。

この記事では、今さら聞けない「イマーシブ空間」の基本から、世界を驚かせている最新事例まで、誰にでも分かりやすく徹底解説します!
イマーシブ空間の正体は「五感を包み込む」プロAV技術
「没入感」は、一体どうやって作られているのでしょうか?
その秘密は、空間全体をキャンバスにするプロAV(プロフェッショナルオーディオ&ビジュアル)技術にあります。
- 映像技術:壁、床、天井の360度すべてを映像で覆うプロジェクションマッピングや、超高精細なLEDウォールで、来場者の視界を異世界へ塗り替えます。
- 音響技術:特定の位置から音が聞こえるように制御された立体音響(空間オーディオ)で、まるでその場にいるかのような臨場感を生み出します。
- インタラクティブ技術:人の動きをセンサーで検知し、それに合わせて映像や音が変化。見るだけでなく「参加」できる体験を創り出します。
これらの技術を組み合わせることで、私たちは物語やアートの世界に"入り込む"ことができるのです。

世界と日本の代表的なイマーシブ空間事例
それでは、具体的にどのような場所でイマーシブ体験ができるのでしょうか。国内外の代表的な施設をご紹介します。
① 森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス(東京・麻布台ヒルズ)
日本が世界に誇るデジタルアート集団、チームラボによるミュージアムです。「境界のないアート」をコンセプトに、部屋から部屋へと移動し、他の作品と影響し合うアート群に身体ごと没入できます。鑑賞者が作品に触れることでアートが変化するなど、自分自身が作品の一部になるかのような体験は、世界中の人々を魅了し続けています。
② Sphere(スフィア)(ラスベガス)
2023年にラスベガスに誕生した、世界最大級の球体型イマーシブ施設「Sphere」。その内部は、床から天井まで継ぎ目のない超高解像度LEDスクリーンで覆われています。そこに映し出される映像は、観客を深海や宇宙空間へと一瞬で誘います。さらに、16万個以上のスピーカーによる立体音響、風や香り、振動といった特殊効果も加わり、文字通り「五感で体験する」次世代のエンターテインメントを実現しています。
③ イマーシブ・フォート東京(東京・お台場)
2024年に誕生した、世界初のイマーシブ・テーマパークです。ここでは、単に映像を見るだけでなく、自分が物語の登場人物の一人となり、殺人事件の容疑者になったり、スパイとしてミッションに挑んだりと、能動的にストーリーに参加する「完全没入体験」ができます。演劇とテクノロジーが融合した新しい形のエンターテインメントです。
④ 資生堂グローバルイノベーションセンター (S/PARK)
企業によるブランド体験の場としても、イマーシブ空間は活用されています。
横浜・みなとみらいにある資生堂の研究開発拠点「S/PARK」では、体験型ミュージアムを併設。資生堂の考える「美」をテーマにした、五感で楽しめる体験型展示が充実しています。特に16Kの超高精細な大型LEDビジョンで上映されるオリジナルコンテンツは、来場者を圧倒的な映像美の世界へ引き込みます。
なぜ今、イマーシブ空間が注目されるのか?
その理由は、消費者の価値観が「モノ消費(モノを所有すること)」から「コト消費(体験すること)」へと変化しているからです。
そこでしか味わえない特別な「体験」は、強い感動と記憶を残します。そして、その感動はSNSを通じて瞬く間に拡散されます。写真や動画に収めたくなる「フォトジェニック」なイマーシブ空間は、現代のコミュニケーションと非常に相性が良く、強力な集客力と宣伝効果を生み出します。
体験が、人を動かし、ビジネスを動かす
いかがでしたでしょうか。イマーシブ空間は、もはや一部のエンターテインメント施設だけのものではありません。
商業施設や観光地では、訪れた人々に忘れられない感動と話題性を提供し、強力な集客ツールとなります。
また企業にとっては、顧客や従業員に対してブランドの世界観やビジョンを直感的に伝え、深い共感とエンゲージメントを育むための強力なコミュニケーション手法となるでしょう。
最先端のプロAV技術が創り出す「イマーシブ空間」は、これからも私たちの心を動かし、ビジネスに新たな可能性をもたらしてくれるに違いありません。
映像や空間演出を手掛けるプロデューサー兼ディレクター。
ProAV Picksでは各種展示会や製品情報のレポートを中心に紹介。